C班第1回研究会

日時:10月1日(金)

場所:神戸大学 瀧川記念学術交流会舘


1. 対話のモデル  --対話コンテキストを考慮した対話音声の生成--

    山下洋一* 田島慶一** 野村康雄** 溝口理一郎* (* 大阪大学 ** 関西大学)

音声対話では, 出力すべき発話の意味内容が同じでも対話のコンテキ ストによって異なった文表現や韻律で発話が表現される. そこで高品 質の対話音声合成を行なうために, 対話コンテキストを考慮した文生 成のメカニズムについて考察する. まず, 対話コンテキスト有無の二 種類の状況で概念表現からの文生成実験を行ない, 文表現の対話コン テキスト依存性を調べ, 表現の相違を11種類に分類した. また, 文生 成実験の結果から得られた様々な対話文に対する選好性を調べた. さ らに, 選好性の高い表現について, そのような表現を生成するために, 話題や情報伝達行為などの考えを導入して対話コンテキストを利用す る手法を示す.


2. 対話モデルと連想処理  --対話における発話間の結束性のモデル化--

    高野敦子 淡誠一郎 馬場口登 北橋忠宏 (大阪大学)

相異なる話者による前後の2つの発話間の意味的結束性としては,先 行発話の働きによって必然的に決定される典型的な関係がある.しか し実際の対話を観察すると,発話間の意味的結束性は多様であること がわかる.発話間の多様な関係が生じる要因が,両話者が考える共有 知識の不一致と話者の意図を考慮することによる情報の付加であるこ とを示し,その観点から発話間の関係を分類する.そして,その分類 に基づいた発話間の意味的結束性のモデルを提案する.さらに,その モデルを基に計算機による発話認識を実現するための結束性の記述に ついて述べ,そこで必要となる知識について考察する.本稿は,特に 重要と考えられる,先行発話が情報要求の場合に対象を絞って議論す る.


3. 教師との対話とドリルテキストの相互参照に基づく初等数学の問題 解決に関する研究

--初等数学の問題解決過程で生じる対話文の分析--

    遠藤勉 大城英裕 賀川経夫 (大分大学)

本研究は対象を小学校1年の算数の世界に絞り込み、問題文と図表が 混在しているドリルテキストならびに人間(教師)との対話を相互参照 しながら算数の問題解決を行うシステムの実現を目指している. 具体 的には, (1)既に基本設計を終え, インプリメントを進めているドリ ルテキスト理解システムに対話を管理するモジュールを付加する. 現 システムはテキストの構成要素毎に生成された複数の解釈モジュール が, 構成要素の構造的および意味的特徴に応じて, 各種の知識モジュー ルを使用し, 必要ならば相互に通信をしながら, 分散協調的にテキス トの意味理解と問題解決を試みるものである.(2)算数の教師用指導書 を参考に問題解決過程で想定される対話文の収集と分析を行う.(3)問 題解決過程のどの時点でどのような発話を生成すべきかをモジュール の動作状態に対応させて明らかにする.(4)図表を含むテキストの解釈 結果が, 外部からの対話文の照応解析, 省略語推定, 曖昧性解消にど れだけ有効であるかを検証する. (5)上記(3)(4)の結果を基にして, 図表との相互参照を考慮した対話文解析アルゴリズムと発話文生成ア ルゴリズムを開発する. 本稿では分散型のドリルテキスト理解システ ムの慨要を示し, テキストに現れる問題文および問題解決過程で想定 される対話文の解析法について述べる.


4. 状況意味論と語用論に基づく対話理解  --談話構造と文脈について--

    白井英俊 (中京大学)

状況意味論に基づいた対話のモデルを考察する。このモデルの目的は、 対話参加者の信念も含めた文脈が、どのように文法論的、語用論的制 約の元に対話によって形成されるかを明らかにすることである。本稿 では、「前提」がもたらす制約について考察する。前提に関する種々 の問題点、特に文の構成素が持つ前提と文全体が持つ前提との関係 (前提投射)について分析する。そして、逆情報という観点から前提 を捉える試みについて述べる。