D班第1回研究会

日時:8月5日(木) 13時〜17時

場所:東京・神田 学士会館


1. 人間−機械対話機構のモデル化  --音声対話システムにおける話題情報と対話構造の利用--

    荒木雅弘 河原達也 堂下修司 (京都大学)

本稿では現在まで我々の研究室で利用してきたオートマトンによる対 話モデルを説明し、その能力を音声認識率の向上を基準として評価す る。次に、そのモデルでは扱い切れなかった問題点を述べ、より柔軟 な対話モデルのために対話構造を共同作業によるパズル問題の探索と して捉える方針と、話題抽出による次発話予測の方針について説明す る。最後に拡張したモデルからの音声認識への予測生成について述べ る。


2. 音声コーパスの設計法に関する一考察

    板橋秀一 (筑波大学)

本論文では、はじめに音声コーパスの必要性と意義、研究の状況と特 色、研究の進め方を述べ、その後で音声コーパス設計において考慮す べき種々の要因について考察している。まず、取り扱うレベルを、音 節、単語、文の3レベルに分け、各々について検討すべき対象を論じ ている。発声テキストに関する統計量を幾つか上げ、それに基づいて 既存の音声コーパスの情報エントロピーを計算して各々を比較検討し、 設計法の参考にすべきであることを述べている。


3. 音声対話におけるタイミングの自由度と割り込みの扱い

    菊池英明 小林哲則 白井克彦 (早稲田大学)

音声対話においてユーザに発話のタイミングに関する自由度を保証す るための割り込みの扱いについて検討した。ユーザに割り込みを許す とき,従来のように一文を単位としてシステムの発話を計画してので は,計画した発話内容と実際に発話した内容あるいはユーザが受け取っ た内容の間に差異が生じる。そこで,発話の計画の単位を,一文の中 で伝えるべき事項とする新たな方式を提案した。実験の結果,提案し た方法によって割り込みを扱うことによって,ユーザのタスク完了ま での所用時間は減少し,自らの発想に基づく積極的な発話が増えるな ど,システムの利便性が向上することが確認された。


4. 説明的応答の事例とマークアップとその事例

    土屋俊 (千葉大学)

TEI P2が提案している方式によって対話資料のマークアップを行 ない、音声情報のタグによる表現の方法について検討した。とくに、 作業過程における問題点、解決法について考察した。TEI方式のタ グ付けは、強力な表現力を持つが、そのデータを作成することはツー ル類が伴わない限り膨大な労力を要する。また、意味のある記述を行 なうためには、音声処理の成果を利用する必要があることが明らかと なった。