公開シンポジウム

日時: 1993年11月13日(土) 10:00〜18:00

場所: 早稲田大学 総合学術情報センター 井深大記念ホール


講演

音声対話研究の目指すもの            堂下修司 (京大)

言語理解のための種々のヒューリスティックス   長尾真 (京大)

音声翻訳の現状と将来 -- ATR計画を中心として   飯田仁 (ATR)

音声認識を容易にする対話制御方式        新美康永 (京都工繊大)

物語理解と状況把握               岡田直之 (九工大)

パネル討論 「音声対話のパラダイム」

                パネリスト   福村晃夫 (中京大)

                        藤崎博也 (東理大)

                        白井克彦 (早稲田大)

                        田窪行則 (九大)

                司会      溝口理一郎 (阪大)

福村教授から、音声対話の諸相に関して幅広い観点からの指摘があっ た。特に音声対話が単独には存在しえず、常に発話の環境、状況、対 話者が持つ知識、イメージ等との関連が深く、それらと切り離しては 対話の理解が行えないことの説明が実例を通して行わた。藤崎教授か らは対話の言語現象の特殊性の詳細な分析の後、音声対話の研究の姿 勢として、Ill-formednessから逃げるのではなく、それを受け入れて、 人間の音声対話に学ぶべきであるとの提案があった。田窪助教授は、 言語学者としての立場から、自然言語をコミュニケーションの道具と してみた場合の不都合さを指摘して、その不都合さを補うために、感 投詞や終助詞などを利用するという新しい観点を提案した。そして、 感投詞や終助詞等を分析することによって新しいパフォーマンスモデ ルを構築するという研究の方向を述べた.白井教授は音声対話処理シ ステムの実現に必要なシステムアーキテクチャに関して並列分散に基 づく方式の必要性と設計の際に注意すべき課題について述べた. そのあとフロアーを含めた討論に入った.そこでは話言葉の実時間性 からくる様々な制約とその利用,情報表現の粒度,話者が共有する知 識と発話との関係などが活発に論じられた.特に,話者とコンピュー タが共有する(すべき)知識の質と量に依存して,対話音声理解シス テムの構造は大きく依存するので,その辺りの議論を更に深めなけれ ばならないという合意が得られたが,その方法論にまでは議論を進め る時間的な余裕がなかった.しかし,短い時間にしては密度の濃いパ ネルとなった.

(要旨:溝口理一郎)