1994年度 第1回 全体集会

日時: 1994年6月25日(土) 9:30〜17:30

場所: 早稲田大学 理工学部 55S号館2階第3会議室


チュートリアル(1)

「音声認識のためのモデルとアルゴリズム --HMM,言語モデル,サーチ--」 中川聖一 (豊橋技科大)


チュートリアル(2)

「構文解析手法」 松本裕治 (奈良先端大)


パネル討論 「人間/機械協調系における,対話と概念,常識,意図,信念」

                パネリスト   横田将生 (福岡工大)

                        西田豊明 (奈良先端大)

                        上原邦昭 (神戸大)

                        土屋俊 (千葉大)

                司会      溝口理一郎 (阪大)

横田教授から音声理解システムを開発する際に必要となる常識の取り 扱いとそれに基づく理解システムの定式化に関する報告があった. 特 に, 音韻認識の不正確さに起因する単語の脱落を, 常識に基づいてあ り得る発話を推定しながら補う問題を, 「父親自動車学校通勤」とい う面白い例を用いて説明があった. 続いて,西田教授より分散協調シ ステムの枠組で複数のエージェント間で通信を行うための共通オント ロジーに関する報告があった. 研究の開始時点の計画とは異なり, 人 間を系に含めた通信を考慮することの必要性から, 現在はハイパーメ ディアを含む知識の組織化, 特にテキストからのボトムアップにオン トロジーを設計する方法を考察しているとの報告があった. 次に上原 助教授からは, システムからの発話を生成する際に必要となる, テキ スト生成プランニングに関して, 利用者からのfollow-up質問に対し て柔軟に対処するための, CBRを用いたリアクティブプランニング の研究成果の説明があった. 溝口教授からは協調的な対話を実現する ためにシステムが必要とする知識, 常識, 概念に関する考察に関して, いくつかの対話例の分析から得られた結果をシステム化する立場から 報告があった. 最後に, 土屋教授からは, これまでのパネリストとは 異なり, 概念や常識などは不要であるという立場から, タスクを明確 にして, しっかりしたコーパスを作成することの必要性が主張された. 土屋教授の議論を誘う提案が効を奏して, 会場からの質問や発言が相 次ぎ活発な討論となった. コーパス作成の重要性は参加者全員の意見 の一致するところであるが, その手法となると手探りの状態であり, 必要なツールやタスクの設定に関する質疑が集中した. 土屋教授の話 しは, 多少誤解を招く表現があったが, 対話を考察する際に一般的な 対話の議論よりもタスクを明確にした対話の収集とその詳細な分析の 重要性を主張することが主旨であった. 今後の対話研究を考える上で 大切なことの一つとして, 研究のゴールを, 対象とする対話が持つ性 質に関して明確にして, 典型的な対話をいくつかのレベルに分けて設 定し, 的を絞ることの重要性が示唆された. なお, 途中でパネルの主 題とは離れるが, 研究を遂行する上での姿勢や立場, 例えば トップ ダウン対ボトムアップ, 理論的対実際的等, ということに関する話題 も注目を集めた.

(要旨:溝口理一郎)