重点領域研究「音声対話」 研究目的
情報の伝達は、人同士の相互の意思疎通に用いられるだけでなく、人の知識や
知能の習得と形成の過程においても重要な役割を果たしている。その過程は、
結局は対話として具現化される。したがって、対話のメカニズムの解明は、人
間の知的活動の根源を探るのに必須のものである。さらに最近では、計算機が
一つの独立した行為者(エージェント)として人と深い関係を持つようになった
ため、人と計算機の意思疎通は重要な課題となった。すなわち、人と計算機と
の間においても、知的なマンマシンインターフェイスを実現するためには、自
然でかつ自由な対話系の実現は重要な課題である。種々の対話メディアの中で
も、音声による対話は、最も自然でかつ多様性、融通性と深さに富むものであ
る。しかしながら、その本格的研究は始まったばかりであり、それを体系的に
扱う手法はまだ確立されていない。
音声による対話能力は、全ての人が生まれながらに持っており、自律的に獲得
されていく自然でかつ基本的な能力である。本研究は、その過程のメカニズム
を解明し、音声科学・言語科学・知能科学・認知科学的モデルを構成し、それ
を計算機の上に対話理解生成システムとして具体化することを目的とする。こ
こでは、従来個別的に行われてきた音声、言語、知識・概念の各レベルの研究
の一層の高度化とともに、それらを貫く共通的原理である対話の観点から包括
的にとらえていくことが、今後のブレークスルーのための基本的な課題となる。
対話のメディアとしては音声言語の他に文字・符号、図形・画像など種々のチャ
ネルがあるが、本研究では、従来のようにいわゆるマルチメディアとして横に
広く浅く扱うのではなく、焦点を音声言語系にしぼった上で、縦に深く系統的
に探究する。
本研究の学術上の意義は以下の通りである。
- 音声科学、言語科学、知能・知識科学、認知科学等それぞれの分野での
固有のモデルを音声対話という包括的目標に適用して、その有効性を確かめる
とともに、総合的体系としてまとめ上げることができる。
- そのために必要な、各分野でのモデルを相互に結合するための境界条件
(インタフェース条件)を解明できる。
本研究の具体的・総合的成果を上記の諸科学の分野へフィードバックして、
具体化・高度化に寄与できる。
また、本研究は、次のような将来的課題に対する基盤技術の形成にも大きく貢
献できよう。
- 計算機とのヒューマンインタフェースの改善
- 音声ワードプロセッサへの貢献
- 教育は教師と生徒の対話---次世代CAI実現の基本技術
- 通訳者なしの多言語間対話
- 特殊環境下における人間(オペレータ)と機械の交流・制御
- 聴覚・発話障害者への援助手段
juten-taiwa@kuis.kyoto-u.ac.jp