あらまし 本論文では,即興演奏未習得者のための演奏支援について述べる.我々の最終目標は,即興演奏未習得者が通常の楽器を用いて即興演奏を行えるようになることである.この目標を達成するために,我々は「即時的旋律創作能力の補助」と「即興演奏の練習環境の提供」の2つのアプローチで,即興演奏の未習得者をサポートする.「即時的旋律創作能力の補助」に対しては,旋律中の不適切な音を自動的に補正する演奏支援システムismを開発した.これは,演奏された旋律中の不自然な個所をリアルタイムに検出し,適切な音に変換することで,即時的な旋律創作を容易にするためのものである.「即興演奏の練習環境の提供」に対しては振動により不適切な音を指摘する学習支援システムismvを構築した.このような支援システムを実現するうえで中心となる課題は,どのように不適切な音を検出するかである.これに対し我々は,N-gramで旋律をモデル化し,その確率値が小さなもののみを不適切と判定する手法を提案する.実験の結果,提案手法により旋律中の不適切な個所の検出精度を上させることができ,ism/ismvが即興未習得者の演奏支援に有効であることが示された.
情報処理学会論文誌,Vol.46, No.7, pp.1548--1559, July 2004.
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あらまし 本論文では,音響的特徴から得られる楽器の階層表現に基づいた未知楽器(学習データに含まれない楽器)のカテゴリーレベルの音源同定について述べる.未知の楽器をどのように扱うかという問題は,楽器音の音源同定において不可避な問題であるにも関わらず,これまでの研究では扱われてこなかった.本研究では,未知の楽器をカテゴリーレベルで認識することを提案する.まず,未知楽器のカテゴリーレベルの認識に適した楽器の階層表現を自動的に獲得する手法について述べ,この手法に基づいて得られた楽器の階層表現を用いて,未知の楽器のカテゴリーレベルの認識を行う.さらに,楽器音が既知か未知か(すなわち,学習データに含まれる楽器か否か)を判定する処理を導入することで,既知の楽器は楽器名レベルで,未知の楽器はカテゴリーレベルで認識することを実現する.実験の結果,平均約77%の未知の楽器音をカテゴリーレベルで認識することができた.
情報処理学会論文誌,Vol.45, No.3, pp.680--689, March 2004.
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あらまし 本論文では,音高による音色変化を考慮する楽器音の音源同定手法を提案する.楽器音の音色が音高によって変化することは,従来から広く知られているにも関わらず,これを適切に扱える音源同定手法については,研究されてこなかった.本論文では,音高による音色変化を適切に扱うため,平均が基本周波数によって変化する多次元正規分布を提案する.そして,音色空間(楽器音の特徴空間)上で各楽器音データがこの分布に従うと仮定し,この分布のための識別関数をベイズ決定規則から定式化する.提案手法を実装・実験した結果,音高による音色変化を考慮しない多次元正規分布を用いた場合の誤認識全体のうち,個々の楽器レベルでは16.48\%,カテゴリーレベルでは20.67\%の誤認識を削減することができた.
情報処理学会論文誌,Vol.44, No.10, pp.2445-2455, Oct. 2003.
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